メルケル独首相の欧州緊縮政策推進とソロスの批判
ダボス会議(世界経済フォーラム)に登場したドイツのメルケル首相は、改めて財政規律をもたらす緊縮財政の厳格な実施を欧州が結束して行う必要を訴えました。同時に慢性的に財政赤字を増大させないための構造改革を進めることを強調しました。また、そのために欧州加盟各国は、欧州への権限委譲が重要との考えを示しました。
統合深化を進めてきたEUは、世界市場で強い経済力を有するEUと、旧東欧などの弱者の国を抱え、域内格差を縮小しつつ経済基盤を強化していくという二つの命題の間で葛藤してきました。今はギリシャという嘘つき劣等生の発覚で想定外の深刻な損傷を受けていますが、逆に言えば加盟各国が、曖昧化し、改革できなかった古き悪習を断ち切るチャンスともいえるでしょう。
かつて韓国が財政破綻し、IMFの下に入ったことで、地縁血縁の馴れ合いで、富が極端に偏り、腐敗と効率性のない無駄の多かった経済活動が、大きく改革された例もあります。そこには歴史や文化に根ざした悪習にまで、踏み込んだ改革もありました。国民も破綻国家の汚名回復のために、痛みを断えたことで現在の韓国経済の発展があるわけです。
無論、EUは韓国とはまったく事情が異なります。先進国として、あるいは民主主義を成熟化させてきた欧州は、一国家を超えた国家連合体レベルに取り組んでいるからです。同時に冷戦で分断された欧州を取り戻した欧州は、消えないロシアの脅威を念頭に、統合を後戻りさせるわけにはいかないのです。独仏首脳がユーロ圏の解体を選択肢から外しているのは当然のことと言えます。
無論、今の世界的な金融資本主義の原理からいえば、ジョージ・ソロスが指摘するドイツの緊縮政策推進論は危険かもしれません。ソロスは、ユーロ問題で中心的役割を担うドイツは、金融市場の原理を理解していないと言い、金融市場は整然とした金融理論で動いているのではなく、感情で動き、不安を最も嫌うと言っています。
つまり、欧州を率いるドイツの緊縮政策の主張は、デフレスパイラルを誘発し、金融市場に不安を与えるという批判です。ソロスは、一方で自由市場主義信奉者であると同時に、自由市場主義の不備を認め、経済活動に対して公的機関による一定の管理・規制の必要性に言及する二重人格者ですが、共産主義を嫌った彼の欧州統合に対する姿勢は、どうなっているのでしょうか。