イデオロギーにとらわれないユーロ圏救済のシナリオ

 新しくフランスの大統領に就任したオランド氏は、早速、大統領以下、首相や閣僚の給与削減を打ち出し、緊縮への取り組みを示しました。しかし、同時に現在、週4日制の小学校の授業を週5日制に戻すという公約実施を発表し、当然、それに伴う教員の増員も行う予定です。

 緊縮よりは、成長戦略優先というオランド政権ですが、ギリシャが総選挙後の組閣に失敗し、6月に再選挙を行うことになり、金融不安が拡がる中、銀行からユーロ建て預金の引き出しが始まっており、緊急の対応を迫られている状況です。

 エコノミストの多くは、オランド氏が緊縮を先延ばしにし、所得の再分配や金持ちへの大幅な増税、公共セクターでの雇用を増やすという、社会主義色の強い政策を実施しても、成長には繋がらないと指摘しています。1997年に発足したジョスパン内閣では、週労働35時間制や若者の公共セクターでの期間限定の契約雇用などで、雇用問題を解決しようとしましたがうまくいきませんでした。

 今は、その当時から比べても、一国の経済政策で事態を好転させることは、遥かに困難になっている状況です。英米のエコノミストの間では、最大の問題は企業の競争力の強化にあり、特にEU圏以外の市場に対して南欧を中心に競争力が低下していることが、最終的に雇用問題に反映されているとの見方が有力です。
 
 もし、オランド政権が社会主義色の強い政策(選挙で公約に掲げた多くの政策)をまじめに実施しようとすれば、ユーロ圏の崩壊は、一挙に強まるだろうと指摘する専門家も少なくありません。しかし、オランド氏は左派では穏健派で、官僚に対しても高飛車な態度をとらないので、現実と妥協することで、うまく立ち回るのではないかという観測も出ています。

 しかし、その場合は、オランド氏とは犬猿の中のオブリ社会党第一書記など、無神論者の急進的左派の突き上げが激しくなるでしょうし、何よりも左派の基盤である労働組合が黙っていないでしょう。さらには緊縮を嫌ってオランド氏に投票した有権者からの支持も得られなくなる可能性もあります。

 しかし、これもギリシャという最悪のお手本があるわけですから、少しは反面教師的効果があるかもしれません。ギリシャ国民でさえ、ユーロからの離脱は、7割以上が願っていないとの世論調査もあります。ギリシャのユーロ離脱は昨年来、何度も囁かれてきましたが、ユーロ全体の信頼ががた落ちする結果を招きかねず、そんな事態になった場合のユーロ圏のみならず、世界経済への悪影響は計り知れないものがあります。

 欧州連合(EU)は、ユーロ導入で為替による通貨価値の調整機能を放棄したわけですが、代わりに人と物の移動を自由化し、域内格差に対して調整が行える面を確保しようとしたわけですが、実は人の移動はそれほど大規模には起こりませんでした。今は高失業率に苦しむギリシャやスペインから、経済が好調なドイツに若者を中心に大量の移動が始まっていますが、それだけでは難しい面もあります。

 どちらにしても独仏が今後、どのように強調して動くかが鍵を握っているのは確かなことです。その中身は、一つには、これまで根深く存在し続けたイデオロギーに根ざした政治に限界があったことを認め、現実に正面から対処し、その上で欧州らしいさを入れ込んだ解決を独仏両国が牽引しながら解決することだと思います。

 もともと、無駄が大嫌いなドイツ人には緊縮政策は体質に合った側面もあります。今後は欧州全体が、社会民主主義への再考と構造改革を進めながら、効率性を高める一方、金融取引税など欧州型の規制も導入しながら、ギャンブル色の強い金融資本主義による人々の生活破壊をいかに回避するかうぃ模索していくべきではないかと思っています。

gworks21gworks21  at 21:13  | comments(0)  | trackback(0) |  、ウ、ホオュサ??ッ・・テ・ラ。ェ 

オランド新仏大統領にみる役人化する国の指導者

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オランド仏大統領、モンティ伊首相、
ラホイ・スペイン首相
(3人とも政治的カリスマ性を感じさせない)

 今でも多くの国々で、混沌が深まるグローバル化に対抗できる強い指導者を望む声は多く聞かれます。しかし、実際には役人的というかテクノクラートと呼ぶべき、役人気質のリーダーが次々に選出されているような印象を強く受けます。

 今回のフランスの大統領選で選ばれた社会党のオランド氏は、政治家としてのキャリアは閣僚経験もなく、外交舞台で働いたこともない人物です。英国のBBCは、オランド氏の勝利が決まった翌日、シラクや他の多くの政治指導者、官僚同様、彼も国立行政学院(ENA)出身なので 、官僚的指導者になる可能性が高く、有権者が考えるような大きな変化をもたらすことはないだろうと指摘しました。

 英エコノミストも、多くのメディアが指摘している「仏有権者は、緊縮政策よりも成長戦略を支持した」という論調とは逆に 「フランス人は緊縮政策を嫌ってオランドに投票したのではなく、サルコジ氏の強引なリーダーシップに嫌気が差しただけだ」「フランス人は緊縮政策の必要性を理解している」と指摘し、オランドが公約するような変化は望めないだろうと予言しています。

 オランド自身、大統領と国会議員の給与30%カットなど幾つかの予算削減を公約し、財政健全化は最重要課題であることは認めていますが、予算削減は公平性を持って実行すべきと言っています。しかし、彼が当てにしている税収増は、来年の経済成長率を1・7%に見込んでのことで、IMFは0・5%としており、成長戦略に必要な財源確保は困難と見られているのが現実です。

 今後、成長戦略に伴う財政出動を行おうとしても財務省の抵抗は、相当強いものになるだろうことが予想されます。それに緊縮政策優先を主張するドイツのメルケル首相との会談でも、深刻な対立は避けるのではとの見方が有力です。なぜなら、ユーロ圏にとってもEU全体にとっても、良好な仏独関係は不可欠だからです。

 昨年11月に大統領に就任したマリオ・モンティ氏も政治家というよりは学者であり、欧州委員会委員も経験し、欧州全体の経済構想の草案を作成するなど、政治家というより役人的な人物です。スペインのマリアーノ・ラホイ首相も閣僚経験など政治経験は豊富ですが、調整型政治家として知られています。

 このような役人的国家指導者が増えているのは、政治の中心が経済にあるからでしょう。冷戦までのイデオロギー闘争、その後の民族紛争などの末、とにかく、経済運営が国家指導者の最大の仕事になっていることは明らかです。シラク大統領も1995年の就任当初、各国に送り込んでいるフランス大使に対して、「今後の大使の仕事はセールスマンになることだ」と言っていたのを思い出します。


gworks21gworks21  at 12:39  | comments(0)  | trackback(0) |  、ウ、ホオュサ??ッ・・テ・ラ。ェ 

仏大統領選を左右する国民戦線ル・ペンの心

1995年の大統領選挙から、毎回、注意深く選挙の経過を追ってきた者として、フランスの大統領選挙には、いつも有権者と政治家の感情が激しく渦巻く実態を見てきました。今回の大統領選では第1回投票で17・9%の得票率で3位になったル・ペン候補の言動は選挙の行方に大きな影響を与えています。

 6日の第2回投票を控え、5月1日、恒例の国民戦線の集会で、ル・ペン党首が「私はサルコジ、オランドどちらも支持しない。白票を投じる」と発言したわけですが、その発言の裏に2002年の大統領選の父の恨みを晴らすかのような怨念を垣間見た感じがしました。

 2002年、父のジャンマリー・ル・ペン氏は、現職のジョスパン仏首相を破り、シラク氏との決選投票に進みました。極右政党の党首が決選投票に残ったことは当時、大きな話題になりましたが、マスコミは第2回投票を控え、恐ろしい勢いでル・ペン批判を展開し、とにかく極右の大統領誕生阻止を訴えました。そのル・ペン氏とは夕食を共にした経験もある私でしたが、ル・ペン氏への攻撃の異常さに呆れたものです。

 けっして極右支持者ではありませんが、民主主義の国でありながら、全てのマスコミがル・ペン批判を展開した現象には頭を傾げたものです。結果、シラク氏が85%の得票率で勝利しましたが、先進国の大統領選挙では、85%というのは異常な数字でした。とにかく「ル・ペンを大統領にするな」というスローガンで、左派までもがシラク氏に投票した異常な選挙でした。

 今回の娘ル・ペン氏の白票発言は、政治的には大統領選後の総選挙をにらみ、中道右派のサルコジ氏を支持せず、党員をできるだけ多く当選させ、議会での発言権を強めたいという狙いがあるのは明らかです。自分たちが支持しなければ、サルコジ氏の勝つ可能性は大きく後退することは、彼女が一番知っていることです。結果、オランド左翼大統領が誕生することもよしという姿勢です。

 しかし、同時にサルコジを支持した場合、サルコジの影に国民戦線が隠れる可能性も高く、選挙協力の効果は乏しいのも事実です。同時にあの2002年の大統領選で父を大悪人のように扱った中道右派への制裁の意味もあり、政権政党に国民戦線を成長させたい狙いもあるでしょう。

 とかく選挙というものは政党が一つになっていなければ勝てません。2002年の時は当時人気の高かったドロール欧州委員会委員長が立候補しなかったために左派は分裂し、シラク氏支持で一本化した右派に負けてしまいました。今回は左派は極左から環境政党まで幅広くオランド支持に回っています。

 もう一つ今回の大統領選挙の特徴は、とにかくサルコジ氏を降ろしたいという国民感情が渦巻いていることです。彼がこの5年間やったことより、彼のトップモデルとの超贅沢な私生活、下品な言動への不快感が大きく影響している問題です。元国会議員の私の友人は「彼の演説のうまさ、行動力には誰もが敬服しているが、人間的に彼を好きになる同僚議員は少ない」といつも言っていました。

 有権者の多くが「オランドを支持しているわけではないが、サルコジにだけはなってほしくない」という話をよく聞きます。その意味ではサルコジ氏は身から出た錆ともいえますが、この数日で支持率を回復できるのでしょうか。どこの国で指導者を探すのは多難なようです。

gworks21gworks21  at 15:42  | comments(0)  | trackback(0) |  、ウ、ホオュサ??ッ・・テ・ラ。ェ 

フランスの文化政策(3)

P1000565絵解き ロレーヌ地方の首都メッスに2010年5月にオープンした文化複合施設、ポンピドゥー・センター・メッス。日本人建築家、坂茂とフランス人建築家、ジャン・ド・ガスティーヌの設計による。
 フランスの文化政策において、彼らが考えるフランスの文化・芸術とは何を意味しているのだろうか。確かに国立美術館では、フランス人芸術家を取り上げることは少なくないし、フランスを舞台に活躍した外国人作家を取り上げることも多い。 

 フランスはナショナリズムの強い国として知られ、日本と違い、エリート教育機関でも、例えば日産のゴーン社長が卒業したエコール・ポリテクニーク(高等理工科学校)の愛国教育はナポレオン時代に遡り、フランスの価値を誇示することに余念がない。(今でも学生たちは軍事パレードで軍服を着て、行進しています) 

 しかし、国家の価値を高めることと、フランス人誇示という民族主義的発想は異なる。事実、美術館を初め、多くの公共建造物のコンペは世界的で、今年12月の開館が予定されるフランス北西部ランスに建設中のルーヴル美術館分館ルーヴル・ランスは、日本人建築家、妹島和世らが設計に関与しているし、外国人建築家の採用は枚挙に暇がない。 

 つまり、フランスは優れた芸術作品を生み出す「場」を提供し続け、同時に世界の芸術作品を評価する権威ある「場」であり続けようとしているのだ。このことは19世紀末から20世紀初頭にかけて、エコール・ド・パリと呼ばれた時代に、藤田を含め、世界中の芸術家が集まり、美術史に決定的影響を及ぼした芸術運動が展開されたことからも分かる。
 

 芸術を生み出す土壌を常に維持し続けるためには、芸術家の創作意欲をかきたてる豊かで自由な環境が必要であり、同時に彼らが作り出す作品を鑑賞し、楽しみ、評価する人々や市場の存在が不可欠だ。それは高尚な芸術だけに止まらず、広範で多様な文化を生活の一部とする土壌であるべきとも考えられている。(フランスにとって多様性は重要な社会の柱です) 

 例えば、ヴァカンス時期の南仏で繰り広げられる国際的な演劇祭や芸術祭から、パントマイムや大道芸人祭りに至るまで、多様な文化イベントは、それを楽しむ世界から集まるヴァカンス客によって支えられている。重要なことは自国民クリエーターではなく、フランスという国がクリエーター達を育て、優れた作品を生み出す「場」であり続けることだ。 

 つまり、常に世界中から才能溢れるクリエーターを集め、人間をより豊かにしてくれる多様な文化を生み出す「場」としてのフランスの文化・文明の高さを世界に誇示するという国家的野心が文化政策の背後には読み取れるのだ。 

 『フランスの文化政策』を著したパリ大学第一のグザビエ・グレフ教授は、著書末尾で政権ごとに文化政策のガバナンスについての論争はあることを認めながらも「右派も左派も含め、国民間において文化の位置づけに関しては、強いコンセンサスが存在する」と指摘している。 

 だからこそ、政権が変わっても前政権で決定された文化予算のほとんどが、フランスでは継続性を持っている。それは文化政策が政治信条に左右されるリスクを熟知しているからでもあるが、フランス国民の文化政策への気構え、決意でもあるのだ。




gworks21gworks21  at 08:00  | comments(3)  | trackback(0) |  、ウ、ホオュサ??ッ・・テ・ラ。ェ 芸術 | 政治 

フランスの文化政策について(2)

画像 008絵解き パリ中心部セーヌ河沿いに2006年にオープンしたケ・ブランリ美術館。アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカの固有の文明・文化・芸術を扱う。

 中央集権色の強いフランスの文化政策を担う文化省は、2002年に歴史的文化財の保護に加え、「芸術活動や他の創造的活動の奨励、芸術教育及び芸術活動の発展の促進」というデクレ(政令)により、
21世紀の文化政策を打ち出した。その中には芸術、文化が国際経済に新しい価値を付与し、貢献するとの認識が書かれている。
 

 さらに興味深いのは文化の中立性の扱いだ。政府は高尚な芸術とそうでないものを仕分けすることは極力避け、多様な芸術・文化を助成、保護する姿勢を貫いている。今年10月には仏中西部アングレームに漫画博物館がオープンした。フランスでは漫画も文化・芸術として認知されており、税金が使われることに反対する人はいない。
 

 トロートマン元文化相は「文化財とそのサービスは、人々のアイデンティティと社会的絆を守るための特別な機能を持つ」と述べ、文化の価値を強調している。このように文化政策に大きな意義と目標を設定するアプローチこそ、いかにもフランス的であり、国家総予算の0・9%に相当する(日本は0・13%)膨大な文化予算が引き出されている。(日本の政治家に文化を語れる人は少ないし、語れても政治的得点に繋がらない場合も多いようです)
 

 逆に言えば、文化、芸術は金持ちや趣味人の道楽ではなく、国家政策上、極めて重要な位置を占め、優先順位も高いということだ。特にグローバル化が進む今、文化政策は国家の価値を高め、アイデンティティを強化することにおいて重要性を増している。
 

 もう一つ新政策の重要な点は文化の多様性のポジティブな役割についてだ。それは複雑化する社会の統合における文化の役割の重視だ。分かりやすくいえば、異なった宗教や価値観、慣習を持つ人々の対立が表面化する21世紀において、文化は社会的統合に寄与する重要な役割を担うとの認識に立って文化政策が考えられているということだ。(異文化コミュニケーションのツールにもなるということでしょうか)
 

 文化政策には、さまざまな課題がある。文化財保護、芸術家支援、著作権保護、美術館、舞台芸術、文化産業(映画・書籍)、文化的景観、地域文化など、その課題は広範に及ぶ。加えて、急速なグローバル化で文化の国際的協調、ネットワーク化の重要性も増している。
 

そのため、例えばルーヴル美術館は、アラブ首長国連邦アブダビに30年契約でルーヴルの名を冠する美術館を建設し、作品を貸し出すプロジェクトを進めている。中東アラブ世界と文化的に強い絆を結ぶことの重要性が強調されている。イラク戦争の時もフランスだけがバグダッドに文化センターを持っていました)
 

一方、フランスの文化政策に課題がないわけではない。例えば、芸術活動を行う個人への支援が十分でない問題は、未だに改善が求められている。例えば、芸術団体や芸術家個人、文化振興に貢献する人々や団体に対する税制優遇や支援はよく知られている。しかし、彼らの経済的困窮は未だに解決されていない問題だ。日本よりは恵まれているように思いますが)
 

とはいえ、フランスの文化政策は、けっして場当たり的ではなく、時代の変化を見据えながら、国家の価値を高めていくための目標や意義を設定し、確実に結果を出し、国民からの支持を集めていると言える。



gworks21gworks21  at 08:30  | comments(0)  | trackback(0) |  、ウ、ホオュサ??ッ・・テ・ラ。ェ 芸術